オゾン療法とは

 オゾン療法とは、医療用オゾン発生器から採取されたオゾンを、直接あるいは間接的に投与する治療法です。
 オゾン療法は、今日、近代西洋医学の補完的治療法として世界中で活用されています。
ドイツで発祥したオゾン療法はヨーロッパを中心に100年に近い歴史があり、現在、各国のオゾン療法学会が協同で組織したオゾン療法学会ヨーロッパ協同体を中核として多くの知見が積み重ねられています。加盟している国は13ヶ国になり、日本医療・環境オゾン学会も加盟しております。
 オゾン療法の治療効果については科学的にも認められるようになり、2016年に科学的エビデンス評価のEBM分類で、大量自家血液オゾン療法(MAH)、オゾン注腸法(RI)のそれぞれがIb, IIaと高い評価を得られるまでになりました。オゾンの量が極微量であることと適切な施療方法で副作用が殆どなく、その安全性についてはこれまで十分に研究・確認されてきております。
 オゾン療法の作用メカニズムを簡単に紹介します。
極微量のオゾンが血液や体液に含まれる特定の成分と反応して活性物質が複数産生されますが、その産生物質が細胞に刺激を与えて即効性(鎮痛、視野の透明化など)や遅効性 (疾患の治癒 、体調の改善など) 効果を示すとされています。オゾン療法はその安全性、有効性、手軽さから今後、現代医療の手助けだけでなく、自然災害が多発する今日、現地での緊急時対応にも役立つ、命を守り得る治療法となるものと確信しております。

オゾン療法はなぜ効くの?

① オゾン療法とは人の自然治癒力を高める治療方法です

 人間には自然治癒力と称して、生まれながらにして病気やケガに対し自己で治す能力(これを自然治癒力と言います)があります。医薬品が効果を発揮するためにはこの自然治癒力の強化が背景になければなりません。100年の実績を持つオゾン療法は、この自然治癒力を強める働きにより様々な疾患に対して効果を発揮していると思われます。さらに最近、医薬品同様オゾン療法のメカニズムがわかってきました。微量オゾンが適度な酸化ストレスとして作用することによりSOD、グルタチオンぺルオキシダーゼやカタラーゼなどの抗酸化酵素や、炎症反応に関与するNFκB や鎮静化と細胞防御系の強化に関与するNrf2などの核内転写因子を活性化することによって生体のバランスを担っていることが確認されています。また、ウイルス疾患に対しては、以下に示すようにインターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などのサイトカインや一酸化窒素などの産生誘導に関与していることがBocciらによって明らかにされました。

オゾン処理によって誘導産生されるサイトカインと一酸化窒素(NO)

インターフェロンα インターフェロンβ インターフェロンーγ
インターロイキンー1β インターロイキンー2 インターロイキンー4
インターロイキンー6 インターロイキンー8 インターロイキンー1
腫瘍壊死因子(TNF-α) 顆粒球マクロファージーコロニー刺激因子(GM-CSF)
トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β) 一酸化窒素(NO)

② オゾン療法のメカニズム

 極微量のオゾンが血液や体液に含まれる特定の成分と反応して活性物質が複数産生されますが、その産生物質が細胞に刺激を与えて即効性(鎮痛、視野の透明化など)や遅効性(疾患の治癒 、体調の改善など)効果を示すとされています。
 最近、上記①に述べたように微量のオゾンによる生成酸化物が核内転写因子Nrf2を活性化し、抗酸化酵素や解毒酵素の遺伝子発現を促すことが明らかにされるなど、オゾン療法の作用機序に関する研究も進んでいます。
 これは、微量オゾンが示す「血流の改善と虚血性組織への酸素運搬の促進」「免疫系の穏やかな活性化」「抗酸化酵素と解毒酵素の増加による細胞の防衛機能の強化」などの多彩な作用で説明できるようになってきました。

※「オゾン療法研究」第5号、第7号参照

③ オゾン療法のエビデンス

 オゾン療法のエビデンスは、我が国の日本医療・環境オゾン学会をはじめ13ヶ国のオゾン療法学会が協同で組織したオゾン療法学会ヨーロッパ協同体が中核として、数多くの研究がなされてきました。
 その科学的成果は、2016年に科学的エビデンス評価であるオックスホード大学EBMセンターのエビデンスレベルでのEBM分類でMAH、RIのそれぞれがIb, IIa の高い評価を得られるまでになりました。オゾン療法はオゾンの量が極微量で副作用が殆どなく、臨床効果と安全性から、世界的にも認められるようになりました。

④ オゾン療法の将来

 オゾン療法はその安全性、有効性、手軽さから現代医療の手助けだけでなく、自然災害が多発する今日、現地での緊急時対応にも役立つ、命を守り得る治療法となるものと確信しております。

オゾン療法の効果一覧

《人体の一覧》

尾形利二先生(日大歯学部教授、1912-1977)の10,000件をこえる治療経験に一部変更を加えてまとめたものです。

 尾形先生の功績をたたえて掲載させていただきました。

オゾン療法の生体への作用

 オゾンは生体成分と直ちに反応して、OCl・(短寿命)とカーボンセンターラジカル(長寿命)が生成します。前者は短寿命で過酸化水素(H₂O₂)になり、後者から種々のオゾン誘導化学種(NFκB,Nrf2など)ができて、次のような臨床効果を発揮します。

イ)鎮痛消炎作用

 炎症細胞に働きかけ、酵素シクロオキシゲナーゼ2(COX2)の産生を阻害し、炎症のもとであるプロスタグランジン(PG)の生成を抑えます。

ロ)免疫作用

 免疫細胞に働きかけ、下記に示す様々のサイトカイン(例えばインターフェロン γ など)を産生させ、免疫系サイトカインにより病気の予防や治癒過程の相乗作用を誘起します。

ハ)抗癌剤との併用で相乗効果

 インターフェロンや様々なサイトカインなどの抗ガン物質を誘導させることができます。したがってオゾン療法との併用により、抗ガン剤の量を減すことができ、減薬により患者のQOLを向上させることができます。

オゾン療法の具体的な方法

オゾン療法の具体的な施療は以下の6通りの方法があります

但し、如何なる場合もオゾンガスを直接吸い込むのは禁忌

① オゾンガス浣腸法

 滑らかな使い捨てオゾン耐性プラスチック管を用いて、オゾンガスを肛門から直腸に直接注入する方法です。 オゾンガスは腸内細菌叢のバランスを整え、免疫力を活性化して炎症状態を改善します。またオゾンガス自体は腸管粘膜成分などと反応して直ちに分解されますが、その時に産生された生成物の作用により、大量自家血液オゾン療法と同じような効果が得られるため、全身の様々な疾患に適用できます。
 この方法は安価で準備が容易で不快感も少なく、施術時間が短く実用的なため、血管確保の困難な小児や高齢者に優先的に使用されています。特に、潰瘍性大腸炎には劇的な効果を示しています。

② 大量自家血液療法

 この方法は患者自身の静脈血液50~100mLを採取し、体外で決められた量のオゾン・酸素混合ガスと反応させ、その血液を体内に点滴でもどします。その際、使い捨て滅菌器具を使用し、最初から最後まで閉鎖系で行われるため、外部からの感染の危険性は全くありませんし、オゾンガスは血液との接触で瞬時に酸素に分解され、血液中にオゾンが残ることはありません。
 従って「血液中のオゾンガス」と表現することはありません。

③ 皮下注射法

 オゾン・酸素混合ガスを患部に直接、または患部周辺に分けて、数mL(1~2mL)ずつ皮下注射する方法です。全身の病的硬直、肩こり、腰痛、椎間板ヘルニア、帯状疱疹(及び、帯状疱疹後神経痛の予防)、その他の痛み、眼性疲労などに即効性に近い効果があります。

皮下注射法の治療前・治療後
《写真》右眼部帯状疱疹、オゾン注射前、注射後

④ 少量自家血液療法

 同じ原理を用いて患者自身の静脈血液を3~5mLを採血し、決められたオゾン濃度のオゾン・酸素混合ガスと接触させ、その後オゾン処理血液を強震して赤血球膜を壊します。この処理をした血液を筋肉に注射する方法です。
 これは特にアトピー性皮膚炎などのアレルギ-性疾患を改善する方法として使用されています。

⑤ 関節腔内オゾン注射(関節へのオゾン・酸素混合ガスの注入)

 関節痛の関節腔に、注意深くオゾンガスを注射する方法です。
 皮下注射同様に、患部の毛細血管の血流改善やCOX2産生抑制に伴う痛みの軽減に使用されます。

 注)感染を予防するために特に無菌状態を保つなどの予防手段が要求されます。
「オゾン療法研究 第7号の表10 関節腔内オゾン注射における無菌的操作」を参照。

⑥ 外用使用

❶ オゾン化オリーブ油*

 オゾン化オリーブ油は、局方オリーブ油にオゾンガスを曝気させ、オリーブ油の組成を変えたもので、白色ワセリン状の形態となった製品です。オゾン化オリーブ油はCOX2の産生抑制効果が認められており、さらにTGF-βやTNF-α等のサイトカインを産生させます。
 創傷、火傷や、細菌、真菌類などによる皮膚炎および皮膚発疹などの患部に直接薄く塗布します。
 口内炎、痔瘻、瘻孔、褥瘡にも効果があります。

 近年、オゾン化オイルと称して、製品の安定していない物が出回る様になりました。製品の安定しない物は、これらのサイトカインの産生やCOX2の産生抑制を充分発揮できない物があります。

急性虫垂炎術後廔孔のオゾン化油による治療(松本ら 2000)

急性虫垂炎術後廔孔のオゾン化油(2000年)による治療の治療前・治療後
《写真》A:オゾン化油投与前 B:廔孔造影 C:オゾン化油1回投与 D:6回投与(傷口が閉じる)

足の踵骨部腫瘍の治療(松本ら 1999)

急性虫垂炎術後廔孔のオゾン化油(1999年)による治療の治療前・治療後
《写真》使用前:足の踵骨部の深い褥瘡
《写真》使用後:0.5~0.8mLを30回投与、褥瘡の消退とまわりからの上皮化が生じる。治癒

❷ オゾン水

 主に歯科治療時の消毒やうがいに使用されます。熱傷、褥瘡、皮膚の感染症にも有効です。内視鏡の消毒殺菌にも使用されています。
 特に災害時に発生する集団生活において、手洗い殺菌や傷口の殺菌、及びインフルエンザなどの感染の防止など、集団感染を防止するのに最適です。さらに仮設トイレなどの消臭やゴミ臭の除去など幅広く応用が利きます。

オゾン水による熱傷の治療効果

オゾン水による熱傷治療の治療前 オゾン水による熱傷治療の治療後
※「オゾン療法研究」第4号第 I - 4 章参照

難治性疾患とオゾン療法

 線維筋痛症、ヒルシュスプルング病、糖尿病性神経障害、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症など、様々な難治性疾患に対して効果が見られております。

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