トピックス

トピックス22021.05.10

オゾン療法で活性化される核内転写因子NFκBとNrf2の関係

BPB Reports, 4:59-63(2021)

Implication of NFκB activation on ozone-induced HO-1 activation.

S. Togi, M. Togi, S. Nagashima, Y. Kitai, R. Muromoto, J. Kashiwakura, T. Miura and T. Matsuda,

 最近の研究から、オゾン療法の効果には核内転写因子NFκBとNrf2が深く関わっていることが分かってきました。NFκBは炎症や免疫応答で中心的役割を担っている転写因子であり、その活性化はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)など多種類の炎症性メディエータの産生を促します。一方、Nrf2はヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)など、多種類の抗酸化酵素の遺伝子発現を促進することによって細胞の抗酸化能強化や炎症反応の鎮静化に働きます。この二つの転写因子を簡単に機能分類すると、NFκBは炎症系の転写因子、Nrf2は抗炎症系の転写因子で、NFκB/Nrf2によって細胞の炎症(酸化系)/抗炎症(抗酸化系)のバランスが保たれています。しかし、オゾンが両者の関係にどのように影響しているかは不明でした。そこで、オゾンで活性化されるNFκBとNrf2の関係を明らかにするため、それぞれの標的分子であるCOX-2とHO-1に注目し、それらの発現に対するオゾンの影響を調べました。実験ではヒト子宮頸癌由来細胞であるHeLa細胞を用い、オゾンガス(30 μg/mL)を導通した培養液中で培養すると、初期(30~60分後)には(NFκBが活性化されて)COX-2のmRNAが生成増加しましたが、3~9時間後には、COX-2のmRNAと入れ替わるように、(Nrf2が活性化され)HO-1のmRNAが生成増加しました。しかし、HeLa細胞のNFκBをsiRNAでノックダウンしてから培養した場合は、COX-2 のみならずHO-1の発現も有意に低下したことから、Nrf2の活性化(HO-1の発現)には、それに先行するNFκBの活性化が必須であることが分かりました。また、この反応系に活性酸素消去剤であるN-アセチルシステインを添加すると、COX-2 の発現は影響されませんが、HO-1の発現が抑制されました。この結果は、NFκBの活性化を介して生成する活性酸素によってNrf2が活性化されることを示しています(図参照)。

NFκBの活性化を介して生成する活性酸素によってNrf2が活性化される参照図


 今回の実験から、オゾン療法とは「微量のオゾンがNFκBを活性化することによって緩やかな炎症を誘導し、細胞の免疫機能を適度に刺激するとともに、その後はNrf2も活性化して炎症/抗炎症のバランスを調整し、生体の恒常性の維持・回復に働く」療法であると定義できるように思います。

2021年4月27日 北海道大学名誉教授・三浦敏明

トピックス12021.04.27

「COVID-19と直腸オゾン療法」関係の文献紹介

J Med - Clin Res & Rev. 2021; 5(3):1-10.

Medical Ozone: The Pharmacological Mechanisms Accounting for its Effectiveness against COVID-19/SARS-COV-2

Olga S. León Fernández1*, Gabriel Takon Oru1, Renate Viebhan Hansler2, Gilberto López Cabreja3, Irainis Serrano Espinosa3, Juan Carlos Polo Vega1 and Elizabeth García Fernández1

1 Pharmacy and Food Institute, University of Havana, Calle 222 # 2317 e/23 y 31, Coronela, Lisa, Habana, Havana 10 400, Cuba.
2 Medical Society for the Use of Ozone in Prevention and Therapy, I ezheim/Baden-Baden d-76473, Germany.
3 National Institute of Rheumatology, Ministry of Public Health, 10 de octubre e/Agua Dulce y Cruz del Padre, Municipio Cerro, La Habana, Cuba.

この論文の要旨は、COVID-19治療における新しい補助治療選択肢として腸内細菌叢を標的とすることに注目し、オゾン療法のより適切なアプリケーションとして直腸オゾン療法を強調していることです。
新型コロナウイルスの受容体としてのACE(アンギオテンシン変換酵素)2が、最も多く存在しているのは、肺や喉ではなく、小腸や大腸であり、新型コロナウイルスに感染すると、下痢症状が伴うことが少なからずあることが観察されています。これは腸内細菌叢の組成に変化をもたらす炎症性腸疾患(IBD)患者の約半数は、肺機能低下していることが以前から知られており、一方、呼吸器ウイルス感染症も腸内細菌叢を変化させると言われています。呼吸器ウイルスに対するマクロファージの反応も、腸内細菌の存在に依存していることなどから、肺と腸は密接に関連した器官であり、双方向伝達ネットワークとしての「腸-肺軸」が注目されています。
以上から、COVID-19治療における新しい補助治療選択肢として、直腸オゾン療法が適切な方法であるとしています。
その他の内容として、COVID-19に直接影響を与える医療用オゾンの「薬理学的特性」や「免疫応答」、「サイトカインストーム」や「血栓症」のリスクの軽減などについても考察しています。
この論文で行った臨床試験については「オゾン療法研究ニュース第1号、第2号」 を参照してください。

原著:

https://scivisionpub.com/pdfs/medical-ozone-the-pharmacological-mechanisms-accounting-for-its-effectiveness-against-covid19sarscov2-1581.pdf

「COVID-19と直腸オゾン療法」についてはキューバから以下の論文も紹介されています。

  1. IJMPR 2020, 4(6), 94-107
International Journal of Modern  Pharmaceutical Research
AMELIORATION OF SYMPTOMS AND OXIDATIVE STRESS IN HOSPITALIZED CONVALESCENT POST SARS-COV-2 PATIENTS TREATED WITH RECTAL OZONETHERAPY AND NUTRITIONAL SUPPLEMENTATION.

Lizette Gil-del-Valle et at
article_1609153795.pdf

  1. Journal of Pharmacy & Pharmacognosy Research, 9(4), 465-473, 2021
Observance of adverse reactions and analysis of biosafety compliance in the rectal application of ozone therapy in COVID-19 Cuban patients with acute infection or convalescent.

Lizette Gil-del-Valle et at
jppres20.1001_9.4.465.pdf

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